ブランディングの取り組みを大まかに理解する
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【ブランディング】ブランディングとは?その取り組みを大まかに理解する

ブランディングとは要するにブランドづくり。ブランディングをざっくり理解する。

ブランディングとは要するにブランドづくり。
ブランドを創る様々な施策に囲まれている中、ブランディングをざっくり理解する。

ご存知の通り、ブランディングとは要するにブランドづくりです。人々の心に働きかけ、創り上げられた無形資産です。
日本においてブランディングの概念が広がり始め、大企業を中心に動きが活発化してから20年以上経ちます。今や現場のブランドマネジメント担当者にとっては嫌になるほど日常的で、すっかり浸透していることでしょう。
しかしながらブランディングについては当初からマーケターをはじめ、広告、プロモーション、広報・PR、CSR、知財、製品とパッケージ、デザイン、WEBマーケティング、それぞれの立場から様々語られてきました。そのため業務上であまり縁のなかった方にとっては、煙に巻かれたようになり困惑する事も多いかと思います。とはいえ私たちの日常生活が様々なブランディング施策で取り囲まれていることも事実です。
そのためブランディングについて私なりにざっくりと整理してみました。

考えているその取り組みが、ブランディングのどの段階にある事なのか明確にする。

“ブランディング”と言われると掴みどころがなくなるのは、ブランドの本質が無形資産のため深掘りし切れない上、その取り組みが非常に広範に及ぶからでしょう。簡単に言うとブランドづくりなのですが、一歩踏むこむと戦略に関する具体的内容とマーケティング用語が一気に展開されます。構わず理解を深めようとすると今度は様々な分野の専門家が現れ、もはやそれらを整理することさえ面倒になります。
まず直面しているその取り組みが、広範なブランディングのどの段階にあるのか認識してから深く踏み込むといいかもしれません。
ブランディングの段階は大きく分けて以下のようになります。直面している事のほとんどは「戦略立案」か「実行」の中に当てはまる内容と思います。
➊から➍までPDCAを成し絶えず運用していきます。この中で調整や修正することはあっても中長期にわたり大きな変更がないのはブランドアイデンティティと、VI・CIデザインの基本デザイン部分になります。

PDCAチャート

  • ➊ 戦略立案:ブランドアイデンティティの創造、コミュニケーション方針の立案。調査分析と戦略企画、及びコンセプトの立案。
  • ➋ 実 行:VI開発とコミュニケーションの実行。VI・CIデザインと、PRや広告・販促など社内外浸透施策の企画・実行。
  • ➌ 検 証:効果測定・検証。
  • ➍ 改 善:改善点の見極め、改善方針の策定。

CI、VI、BIについて。

単に言い方の問題に過ぎませんがCI、VI、BIの定義についてです。
まずCIはコーポレートアイデンティティ、いわば企業としてのブランディングです。VIはVIS・ビジュアルアイデンティティシステムの略で、ブランドや企業のアイデンティティを視覚的に表現し、それを体系化したものです。BIは少々混在しており、当サイトではブランドアイデンティティを指している一方、ビヘイビアアイデンティティ(Behavior identity:行動規範)を指すことがあります。BIがビヘイビアアイデンティティを指す場合は、BIに併せてVIとMI(Mind Identity)がセットになります。
またブランドアイデンティティの定義には変遷があり、狭義では「商品ブランド」を指すことがあります。CIに対してその企業が展開する商品ブランドという位置づけです。昔は当方でもこの理解でいました。
ブランディングがすっかり一般化した現在では、ブランドアイデンティティをより広義な意味で使っています。大きくは国家ブランド、そして企業グループやそのメンバー企業(企業ブランドのアイデンティティ=CI)、地域ブランド、小さくは個人や素材ブランドと、全ブランドにおける各アイデンティティを指しています。

CIとBI(ブランドアイデンティティ)は一般的にVIを包含します。
一方でCIがビジョン・ミッション・バリューなど明文化したコンセプトまでを指し、VIを含めない形で明確に分けて認識している方もいます。またCIにおけるVIを取り分けて“CIデザイン”と呼ぶことがありますが、当方ではSEO上の理由も多分にあります。この辺、便宜性優先で案件毎に使い分けています。
類似することでコーポレートステーメントがあります。直訳では“企業の声明”ですがタグラインやコーポレートスローガンを指す企業もあれば、コーポレートアイデンティティを端的に100字程度でまとめた文言を指す場合もあります。他にもマーケティングコミュニケーションで顧客に接触するメディアや施策について、先行して定義した大手広告代理店では“コンタクトポイント”、それに対し他社では“タッチポイント”としているなど様々あります。
これらはあらかじめ最初の段階に、メンバー間で明確な定義を共有しておけばいいと思います。


ブランド=ロゴと考えがちな理由。

ブランドロゴとブランド・マーケティングコミュニケーションの関係


ところで単純に“ブランド”と問われると高級ブランドや著名ブランドを想起し、ブランドをつくる場合はまずロゴから…と考える方は多いと思います。前者は一般消費者、後者は経営部門の方により多いように思います。
後者の場合は特に「ブランド=ロゴ」と考えがちなわけですが、なぜ「ロゴ」というものを想起するのか?

ブランドと言われると、まずは社会に浸透した著名ブランドのロゴや名称など、いわゆる著名な商標をモデル事例として思い起こします。商標にはそのブランドに関する知識や体験の記憶が全て結びついており、ロゴはそれら知識や体験を再生するスイッチになっています。記憶され再生される知識や体験、それらがブランドイメージを成しています。

つまりブランドとはロゴやブランド名など「商標」ではなく、本質は商標の背景にある知識や体験「ブランドイメージ」です。
ブランド=ロゴと考えがちなのはブランドの本質が無形資産なので、形のあるロゴを目印として最初に思い起こすからでしょう。無形のブランドに対し、有形のロゴが分かりやすい形を与え、潜在化にあるブランドイメージを一気に引き出し再生する役割を果たしています。
すぐに想起する著名なロゴは、そのブランドコミュニケーションに実効力がありロゴがしっかり機能していることの証です。ロゴデザインの良し悪しもさることながら、VIシステムを堅実に構築し常にマネジメントされているなど、知財として適切に管理されています。

ブランドの背景にあるブランド連想。


ブランドの背景にある「ブランド連想」

ではブランドの背景にあるブランドイメージ・連想とは何か?
ブランド=ロゴと捉えていれば、そのロゴの背景にあるブランドイメージは何か?となりますが、それは以下のような内容で構成されています。

ブランドの背景にあるもの


上の例では大きく分けて「組織」として、「製品・サービス」として、「パーソナリティ(性格)」として、「シンボル」として、と4つあります。つまり製品・サービスから事業活動、企業活動の全部です。
マーケティングやコミュニケーションを通しブランドイメージが創造されていくわけですが、その背景には実体が伴っている、または創っていく地道な活動が必要になります。ブランド戦略が例えば価格戦略に影響を及ぼしたり、事業開発を促すような場合があるため、ブランディングは経営戦略と両輪だと考えられる理由です。
実体や活動が伴う事という面では、社会と結びつきを創り強化するPR活動でも同様です。広報部門やブランド戦略部門、CI戦略部門等は経営企画直下、また社長室付けであることも多いです。
SNSが一般化した現代、ステルスマーケティングなどは今やあっという間に市場に見透かされ、意図的に“イイネ”を集める行動も疑念を持たれるリスクがあります。今のコンシューマーに魔法は効きません。ただし実体があればまた違うかもしれません。バズるのに一定数の肯定的意見が要るのも理解できますので戦略によると思います。

ブランディングとCI計画・コーポレートアイデンティティ


ブランディングとCI計画・コーポレートアイデンティティブランディングとCI計画が大きく関連している理由と日本における経緯

ブランディングの起点は90年代前半。

ブランディングの概念は90年代前半、アメリカの経営学者デービッド・A. アーカー氏がブランド・エクイティ戦略を提唱したことに端を発します。
当方では97年頃から仕事上の周辺で「ブランディング」という言葉が徐々に現れ始めたことを覚えています。またブランドフレームワーク・型に則って構築した国内事例を、いち消費者として初めて目にしたのはレクサスでした。L-Finessコンセプトをはじめ全面的に堅牢なブランド構築を行い、その規模は相当なものだったと思います。
ブランド創造については元が英文なのか堅い印象も受けました。当然レクサスやトヨタのブランド戦略担当者は精鋭ですが、それでも生真面目な内容になることにむしろ真剣な姿勢を感じ取りました。
当時の日本市場ではレクサス=トヨタのいち事業であるとして、どちらかというとネガティブなイメージが優勢だったと思います。しかしレクサスのブランドアイデンティティを長期にわたり、顧客応対など細部においても一貫し続けたことで、結果的にブランドイメージ全体をポジティブなものに転換しました。日本市場において企業ブランドであるトヨタとブランドポジションを離しながら、潜在的にはトヨタの威光ブランド(シルバーブリット)ともなったわけです。

バブル期のCIブームについて。

かつて日本ではバブル期前後にCIブームが起こりました。
その頃は大きな予算を準備できたナショナル企業を除き、多くはデザイン偏重であり、CI計画=デザイン開発と捉えることも一般的でした。CIデザインはバブル期をピークに百花繚乱し、90年代の間には出尽くした感もありました。当時は新鮮でクオリティの高いCIデザインがどんどん生まれ、クリエイティビティに溢れていた時代です。
ただしデザインコンセプトは当然必須なので、その基盤になる企業理念はあったとはいえ、未来イメージをしっかり定義すべきコーポレートアイデンティティはトップヒアリングから得た内容までに留まることが多かったと思います。
本来は自社・顧客・競合の3C分析を経てブランドターゲットやブランドパーソナリティを定義、全社的に社内メンバーの参加を促しながら、未来の「あるべき姿」を創り上げる地道な作業が必要です。CIブーム当時も、それを追求することが本来やるべきことだとマーケターは主張しました。とはいえ、いくらバブル期でも予算やスケジュールに限度はあり、現実的な実行範囲としてデザイン開発が優先されたものと思います。
しかし全社的に共有すべきアイデンティティが完全に明確だとはいえないため、デザイン提案段階でもクライアント社内から様々な意見が沸き上がることは常だったわけです。デザイン方針も定めにくい状況で、コンペでは政治判断が優先されたり、デザイン品質が著しく低い案が採用されるなど、デザイナーにとって心情的に受け入れ難いことも起こりやすく決して楽ではありませんでした。

● 日本におけるCI計画のルーツ:ところで日本のCIを語る上で欠かせないのはPAOS、中西氏です。CI計画を日本に最適化し経済界に知らしめた立役者です。日本企業が企業ブランド創造に取り組む基盤を、70年代から築き上げました。
現代でも日本においてブランディング、特に企業ブランディングに携わる方々にとってはまさにルーツであるため畏敬する方が多くいます。デザインにおいてもグラフィックデザイナーと企業、特に経営層と密接に結びつけ、経済界におけるグラフィックデザインの理解促進と、個人の作家性に依らない形でデザイナーの地位向上に道筋をつけました。

90年代以後、CIはブランディングに直結。

バブル期を経てブランディングが活発化して以降、CIの取り組みは拡張され、“ブランディング”へと発展的に直結します。企業のCI推進部などCI関連部門は「ブランド戦略推進部」などへ名称を更新した企業も多いと思います。
ブランディングはCIよりも広範で多様な概念ですが、企業ブランドは企業活動全体の基盤であり、事業や製品・サービス等様々なブランドに影響するため最も重要であることに変わりありません。ブランド体系のベースとなり各ブランドの戦略企画に大きく関与します。ブランドアンブレラ戦略やサブブランド戦略、個別ブランドを各々成立させるマルチブランド戦略、どの戦略を採るのか根底から影響します。
またCI・コーポレートアイデンティティと同様にブランドアイデンティティ、「未来のあるべき姿」の創造が必須です。そのコンセプトに則り、PRはじめ様々なコミュニケーション施策に取り組みます。
CIは企業ブランドの軸や骨格であり、CI計画のノウハウはブランディングそのものです。

全てに該当し得る「ブランド」の概念。

前置きの通り、企業ブランド以外にも“ブランド”は様々あります。企業グループブランド、事業ブランド、製品・サービスブランド、素材ブランド、個人に至るまでブランドの概念は広範に、全てに該当し得ます。より大きい見地では各国共、国家ブランドづくりに取り組んでいます。また市区町村の各自治体における“地域ブランディング”の取り組みは今や一般的になり、積極的に推進されています。


実体と行動がブランドになる

ブランディングはブランドファンとブランド資産を継続的に創り続けることが目的。それが安定的に成長できる基盤になる。

短期的に成果が上がるケース

上記「ブランドの背景にあるもの」で実体が伴っている事、または実体を創っていく活動がブランディングに必要と前述しました。ブランディングは中長期の取り組みです。短期的な数値上の成果はプロモーションや広告など個別の施策による一時的な現象かもしれません。それらもブランディングの一環ですが、ブランドの実体に合わせすぐに変動するものです。ブランディングは理想とする実体を創りながら、景気などに左右されにくく安定的に成長できるよう、継続的にブランドファンの支持を大きくし、無形資産であるブランド資産を創り続けることが目的です。
もし1年程度の期間でわかりやすい成果を出した事例は、ブランドの実体そのものにそれだけのポテンシャルが元々あったのだといえます。
以下のチャート、正確にはリ・ブランディングという位置づけになると思いますが、現状のブランドの評判が実際の価値より小さく本来はもっと評価されるべきと見込まれるような場合、導入初期段階においてもブランディングの効果は大きく現れるでしょう。ブランディングは将来ビジョンを実現化していく取り組みのため、その後もPDCAを実施しながらより良いブランドへと成長させ、ブランド資産の最大化を目指します。

現状のブランドイメージを正しい姿に改善し、さらに将来的なブランドイメージとブランド価値の創造を目指す

KPIについて

ブランディングは継続的なブランド創りを目的に、中~長期的にトラッキングしながらPDCAに取り組みます。上記の通り、例えば導入後に短期間で売上が上がったとしても、それが短絡的にブランディングの効果によると判断し難いものです。一面的な見方ではなく様々な角度から分析しないと正しく捉えられません。KPIの指標によっては必ずしもブランドの実態を表していない可能性もあります。その前提でKPIの結果を捉える必要があります。

CIマニュアルからブランドガイドラインへ


ブランドガイドライン

ブランディングにおけるガイドラインの内容と変遷

ガイドラインは部門を超えて各メンバー間の意志と表現方針を統合し、中長期にわたり一貫性をもたらします。デザインでは各ツールのデザインイメージが統一され、イメージ連動したアイテム展開を可能にします。

バブル期CIブーム~90年代CIのガイドライン

予算とスケジュール面で十分余裕がある企業では、コーポレートアイデンティティや戦略に言及した内容を編纂し前半に盛り込みます。それが後半のビジュアルデザイン・VISへつながる、本来的なCIマニュアルです。
前述の通りバブル期CIブームから90年代にかけては主にデザイン面におけるムーブメントだったことに伴い、ほぼVIに特化した内容で開発する事が多かったのではと思います。少なくとも当方ではそうでした。当然コーポレートアイデンティティや企業理念を掲載しましたが、概要までに留まるため「Corporate Identification - Visual Design Standards」とタイトルをつけることがほとんどでした。CIマニュアルというより実質的なデザインガイドラインである“VIマニュアル”です。今はスタイルガイドラインとも呼ばれます。
ロゴの表示方法やレイアウトなどデザイン面でルールを定め、各担当者の考え方や制作メディア毎にバラバラにならないよう統合、中長期的に一貫性をもって運用・管理します。割合、機能的で各ツールの設計書ともいえるような内容です。
コンテンツ構成は、冒頭に企業理念やコーポレートアイデンティティ概要及びデザインコンセプトを掲載し、「ベーシックデザインエレメント」「ベーシックデザインシステム」「アプリケーションデザインシステム」「再生用資料」というような内容です。当然、業種や要件により内容はそれぞれ異なります。

詳細化が進む各レギュレーション、拡張するガイドライン。

VIガイドライン/CIマニュアル/スタイルガイド

CIデザイン・VIガイドライン/デザイン・スタイルガイド

ブランディングに対する取り組みが活発化して以降、ガイドラインも進化していきます。
前半はブランドアイデンティティ(CI計画・コーポレートブランディングであればコーポレートアイデンティティ)をはじめとする中長期的なブランド戦略の他、CSRの取り組みなど盛り込むケースもあるでしょう。
ガイドラインは各部門担当者の意志と表現・アウトプット方針を共有~統合するためですので、その辺コントロールが可能であれば概要で十分かもしれません。その場合はインナーに向けたリレーション施策として、社内ポータルサイトにブランドページを立ち上げるなど、別途詳細を伝えるようにします。
前半のブランド戦略に関する内容には、例えば次のようなコンテンツが盛り込まれます。

  • ブランドプロポジション明文化したブランドの本質的概念
  • ブランドコンセプトビジョン・ミッション・バリューやブランドステートメント、ブランド体系
  • ブランドポジショニング
  • ブランドターゲット
  • 世界観ブランドが目指す将来イメージをエモーショナルに視覚化
  • ブランドストーリー

これらは社内及びアウターに向けたブランドサイト(ブランドブック)としても編集されます。

エモーショナルなデザイン表現をコントロールするガイドラインへ

基本デザイン規定や各アイテム設計ではより詳細になり深度を増していきます。背景に印刷機材が進化し高精細になっていったこと、ITインフラとデバイスが進化し画面の高精細化が進んだこと、それら様々な物理的影響とそれによる感覚的・心理的な影響もあったと思います。
基本デザインシステムのカラー規定でも深化が進みます。色彩は雰囲気、いわゆるトーン&マナーを決める感性的な要件の一つで、ブランドの世界観を創り出すのに重要です。メインとなるブランドカラーやサポートカラーに加え、アソートカラー数色や背景色・環境色を加えるなどシステマティックに規定するようになります。複数色から成るカラーパレットがあらかじめ準備されていれば、複数の部門や担当者がPPTを扱う時など、その成果物のデザイントーンを統合できます。
昔はメインカラーとサブカラーなどシンボリックなカラーを1~3色程度、規定するまででした。それらシンボリックなカラーだけでは当然、雰囲気・トーン&マナーの表現には十分ではありません。コーポレートフォント(ブランドフォント)などを決めても、広告宣伝やPRなどコミュニケーションの表現について中長期的に一貫するのも難しいです。この辺は当時、いちVI開発担当者としてジレンマの一つでした。「もっと踏み込まないとあまり意味がないんじゃないか?」と考えていました。

ブランドの世界観をエモーショナルに表現し創り出すには、感性・情緒面で色彩をはじめ、書体とビジュアル(写真画像やイラスト等)等、全体のトーン&マナーを中長期に渡り管理する必要があります。そのためトーン&マナーに関してさらに具体的に踏み込んだガイドラインも開発され、運用されるようになります。
最終的に全体の構成については、大きく以下の2部構成をもってCIマニュアルやブランドコミュニケーションガイドラインとなります。

  • ブランド戦略
  • VIガイドライン機能面:意味とシグネチュア表示規定・レイアウト規定、アイテムデザイン設計情緒面:トーン&マナー(カラーパレット/ブランドフォント/フォトディレクション)各展開アイテムの再生用テンプレートデータ

マーケティングコミュニケーションと社内浸透

社内外に向けたPR施策を軸に、広告や販促活動を実施する。

ブランドコミュニケーションガイドラインやCIマニュアルに則り、コミュニケーションを実施します。
従業員など社内、及び消費者をはじめとする社外、この両面においてブランディング施策を展開。各ステークホルダーとより良く強く結びつく活動を続けていきます。
社内には社内ポータルサイトにブランドページを開設するなど、ブランドアイデンティティが醸成する施策を実施。
社外に向けては、PRを軸に広告や販促と連携したクロスメディアで展開するなど、地道にブランドロイヤリティを高めていきます。
よくある施策として、

  • インパクトのある広告により認知度を上げて興味を促し、「詳しくはこちら…」といった具合に詳細を伝えるWEBメディア・PRページに誘引する。
  • 食品会社におけるレシピ研究部など、消費者に向けて戦略コミュニケーションチームを立ち上げ、SNSとオウンドメディアを活用してコミュニケーションを図る。
  • ティザー広告を仕掛けブランドサイトへ誘致、ブランドストーリーをWEBコンテンツの軸に据えドラマティックに展開する。
  • 誌面記事広告や、WEB広告とランディングページ、DM等を通して販促キャンペーンへ誘引する。
  • イベントを実施し、マスメディアの取材を誘致しながら様々なキャンペーンを展開する。

…等々、案件内容に応じて最適化された様々な施策を展開。
この段階での取り組みでは、例えば『SNSでバズを生み出すことに熟知したプランナー』『WEBマーケティングで大きな成功体験をもつマーケター』など各分野における様々な先駆者や有識者が参加します。また『デジタルサイネージを使い、動画やインタラクションによるインパクトの強い広告』など社会的な時流に即した効果的な媒体が使われます。
そのため各々の専門家がそれぞれ専門的な立場からブランディングに向き合っており、それぞれの視点からブランディングを語ります。ブランディングに特に踏み込む機会がなかった方にとっては情報過多になるため、困惑する理由の一つだと思います。


終わりに


ブランディングにあまり縁のなかった方がそこに一歩踏み込んだ途端、ブランドの本質が無形資産であることも理由でしょうが、煙に巻かれたようになる人もいるかと思います。戦略立案ではマーケティング用語が飛び交い、VI開発でもその戦略企画を基に進めます。その上マーケティングコミュニケーションでは、PRや広告・宣伝などに携わる様々な専門家が関わり、それぞれの立場・視点からブランディングを語ります。
そのため関連するWEBサイトを検索すると、それらの情報によりまたさらに困惑しかねません。とはいえ我々の生活は様々なブランディング施策に取り囲まれており、ブランディングに携わる現場の担当者にとっては日常的な事です。
ブランディングとは要するに「ブランドを創ること」です。その上で今考えている事、直面している事がブランディングのどの段階にある取り組みなのか整理してみるといいかもしれません。

ところで当方では「地上に咲く花をブランドロゴとした場合、根で結びついている地中の実はブランド知識や体験だ」と例えることがあります。その時の土壌は人々の心や社会、市場といえます。そう考えた時、ブランディングとは地道に改善を重ね大きな実を育てていく「農業」のように思うことがあります。きれいな花を目印に、土壌に丈夫な根を張り、いくつもの実を育てていきます。その実の集合体がブランドイメージです。そして花であるブランドロゴを目にするなどボタンに触れた時、そのブランドに結びついている全ての実が一気に引き出されます。
時には品種改良を試すこともあるでしょう。尤も花は枯れることなく咲き続けなければなりませんが。
ブランディングでは稀に個別のコミュニケーション効果で“瞬間最大風速”を生み出すケースがありますが、本来それが目的ではありません。数年後の理想イメージを創るべく絶えず育成し続ける、手のかかる地道な取り組みです。

以下、参考書籍ですが第一刷がひと昔前のものが大半です。社会の変容が速いのであくまで参考まで。

  • ブランディング 7つの原則初版2012年。非常にわかりやすい内容です。最も基本的なテキストと考えていいと思います。
  • 戦略的ブランド・マネジメント初版2000年。ケラー博士による著作の一つ。個人的に比較的理解しやすいと思います。
  • ブランド優位の戦略初版1997年。アーカー博士の著作の一つ。日本語訳はブランディングやCIに縁がないと読み解くのが大変かもしれませんので、英文に問題ない方は原著を。
  • ブランドマネジメントのすすめ方初版2002年。概要までですが網羅的でハンドブックとして有用。
  • ブランド戦略シナリオ コンテクストブランディング初版2002年。生々しい現場から方法論を追求した実践的内容です。

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